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似合っていないジャケット。

卒業シーズン卒業シーズンと、深夜のラジオでコーナーが組まれていた。ただそれも1週間前ぐらいだったから、すっかりその時期は終わったと思っていた。
うちの近くの小学校は、今日が卒業式だったらしい。
小学校の前の歩道は、僕がいつも行くカフェまでの道と同じなので、昼ぐらいに歩いていると男の子3人組がうきうきと乱れながら歩いていた。
そのうちの2人はジャケットを羽織っていた。柔らかい生地のやつ、きっとユニクロだろう。黄色い登下校用の帽子に、紺地のジャケットはあまりにもミスマッチで、可笑しかった。でも、無愛想にシワのないジャケットを着て歩いている人よりは、好感が持てた。
思い返すと、自分の学年のではない卒業式の日は、午前中に終わるから早く帰れる、ぐらいしか頭になかった気がする。
ただ、小中の自分の学年の時の卒業式は、ほぼトラウマに近い記憶として残っている。
僕の時代の卒業式では、名前を呼ばれて返事をし、壇上に上がり卒業証書をたくさんの生徒の前でもらうという謎の儀式があった。
もしかしたら世間にとっては当たり前だったのかもしれないが、僕にとっては地獄だった。
壇上に上がる階段には手摺りがなく、もともと生まれつき足が悪い僕は、登り降りをすることができずに、脇のドアから入って壇上に上がった。
名前の順で自分の前の人の返事が終わるやいなや、僕だけ脇のドアに直行し、ドアを開け、中の金属の手すりの階段を登り、壇上に登場する。
思春期だった僕は、他の生徒と違うことをするのが本当に嫌だった。今思えば誰も気にしていなかっただろうが、小学校の卒業式にそれを経験した僕は、中学に上がると1年生の時から卒業式を迎えるのが嫌だった。
そういうしがらみとか、悩みとか、何もなかったのだろうなと思うと、急に目の前を歩く男の子3人が滑稽で恨めしく思えてきた。
「このあとあそばねぇと、おまえのこのまえのこと、せんせいにチクるからな!」
前を歩く3人はいつの間にか3人から5人に増え、道を塞ぎながらリコーダーを振り回していた。
いじめられていた頃の記憶が蘇るから、僕は小学6年生ぐらいの男の子が一番嫌いだ。
心の中で、サイズの合っていないジャケットを馬鹿にしながら、抜かした。そうやって適当に生きてる奴は、痛い目に遭えばいいと、心の底から思っている。
僕がここで急に「邪魔!」と叫べば、こいつらはしゅんとするだろうか、などと無駄な想像を膨らませながら、過去にいじめてきたやつらと目の前の男の子たちを重ねた。
大人だから何も言わないで通り過ぎる。
なんだか、また負けた気分になった。
いつか、こういうときにぶつかったりされたら、僕は全力でブチギレようと、心に誓った。
カフェの帰りは、好きな雑貨屋のある違う道から帰った。